※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。
「退職したのに住民税の納付書が届いた」「今年は収入が減ったのに住民税がすぐには下がらない」。こうしたことは制度上起こり得ます。住民税は原則として前年の所得をもとに計算されるからです。
当ブログでは令和8年分の所得税はここが変わるで所得税の改正を扱いましたが、そこでも書いたとおりあれは所得税の話だけです。住民税は基準が違います。この記事では総務省と国税庁の資料、および地方税法の条文を根拠に、住民税のかかり方と所得税との違いを整理します。
住民税が1年遅れで来る理由
総務省の説明では、個人住民税は「その年の1月1日時点で市町村(都道府県)に住所がある方」に課税されます。そして所得割の税額は「前年の1月1日から12月31日までの所得で算定」されます。
給与所得者は原則として勤務先が給与から天引きして納めます(特別徴収)。自分で納める普通徴収の場合は、通常6月頃に市区町村から納税通知書が届きます。
| 時期 | 起きていること |
|---|---|
| 2026年1月〜12月 | この1年の所得が、次の年の住民税のもとになる |
| 2027年1月1日 | この日の住所地の市区町村が課税する |
| 2027年6月〜 | 給与から天引き開始、または納付書が届く |
つまり今年の所得に対する住民税は、原則として翌年6月以降に納め始めます。地方税法では、特別徴収は税額の12分の1の額を6月から翌年5月まで納入するものとされ(第321条の5)、普通徴収の納期は6月・8月・10月・翌年1月のうち市町村の条例で定めるとされています(第320条)。市町村民税額が均等割額に相当する金額以下のときは6月中だけになり、特別の事情がある場合は異なる納期を定めることもできます。納め方も回数も同じではありません。
中身は「所得割」と「均等割」の2つ
総務省は、個人住民税を「地域社会の会費」的な性格を持つ税と説明しています。その性格が、2つの内訳にそのまま出ています。
| 区分 | 標準的な税率・金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 所得割 | 課税所得に対して10% | 道府県民税4%+市町村民税6% |
| 均等割 | 4,000円(課税対象者に原則定額) | 道府県民税1,000円+市町村民税3,000円 |
| (参考)森林環境税 | 1,000円 | 国税。均等割と併せて徴収 |
森林環境税は住民税ではなく国税ですが、総務省の説明では2024(令和6)年度から個人住民税均等割と併せて1,000円が徴収されます。標準額で見ると、均等割4,000円と森林環境税1,000円を合わせた定額の負担は合計5,000円です。自治体独自の上乗せがある場合は金額が異なります。
注意点が2つあります。ひとつは政令指定都市では内訳が違うこと。総務省の注記では道府県民税が2%、市民税が8%になります(合計10%は同じです)。もうひとつは、これらが標準的な基準だということ。総務省は「都道府県や市町村は自らの判断で税率を定め、納めるべき額を決定しています」としており、自治体によって上乗せがあります。
非課税ラインは所得税と違う。単身・給与収入のみの例は110万円
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。総務省の令和8年度地方税制改正の概要に、個人住民税の非課税ライン(単身者の場合)がそのまま載っています。
| 単身・給与収入のみの非課税ライン例 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基本額等 | 45万円 | 45万円(変更なし) |
| 給与所得控除 | 65万円 | 74万円 |
| 給与収入の計 | 110万円 | 119万円(+9万円) |
一方、所得税のほうは令和8年分の所得税はここが変わるで見たとおり、単身で給与収入のみなど一定の前提では、課税最低限の目安が178万円です。総務省が示す単身者の例では、住民税110万円・所得税178万円と基準が大きく離れています。
この差があるため、所得税がかからなくても住民税がかかる場合があります。実際の判定は給与以外の所得、扶養親族、各種控除、自治体の基準などで変わります。「所得税が0円なら住民税も0円」とは限りません。
ついでに言えば、社会保険の加入条件もまた別の基準です。2026年10月の変更は2026年10月から変わることにまとめました。所得税・住民税・社会保険は、それぞれ違う線で動いています。
総務省の資料には「地方税独自の非課税限度額が適用」と注記されています。所得税の基礎控除とは別のものさしが使われている、ということです。110万円はあくまで総務省が単身者の例として示した金額で、扶養している家族がいる場合は基準が変わりますし、自治体によって異なる部分もあります。自分の線を知りたい場合は、お住まいの市区町村でご確認ください。
119万円になるのは令和9年度分から
改正後の119万円がいつから効くのかも、資料に書かれています。給与所得控除の最低保障額を74万円へ引き上げる措置は「令和9年度分の個人住民税から適用」で、「引上げ額9万円のうち、5万円は2年間の時限措置」とされています。
令和9年度分の個人住民税とは、2026年(令和8年)の所得にかかる住民税のことです。実際に手取りに反映されるのは2027年6月からになります。所得税の改正が令和8年分から動くのに対して、住民税は1年ずれて効いてくると考えてください。
この給与所得控除の引上げについて、資料には「所得割に係る所得計算は所得税の計算の例によるとされているため、地方税法の改正は不要」と書かれています。所得税側の給与所得控除の変更を、個人住民税の所得計算でも用いるためです。
なおひとり親控除も30万円から33万円に引き上げられますが、こちらは令和10年度分の個人住民税からです。1年ずつ適用時期が違うので、まとめて覚えないほうが安全です。
控除の金額も、所得税より小さいものが多い
非課税ラインだけでなく、控除の額も違います。総務省はこう書いています。
所得控除の種類は基本的に所得税と同様です。しかし、個人住民税が「地域社会の会費」的な性格を持つことから、所得税の方が個人住民税よりも控除額が大きいものが多くなっています。
つまり控除の種類はおおむね共通していても、控除額や計算方法が異なるものがあるということです。たとえば生命保険料控除は所得税と住民税の両方にありますが、上限額は同じではありません。所得税の控除額をそのまま住民税の計算に使わないでください。
1年遅れが効いてくる場面
前年課税という仕組みは、収入が変わった年にはっきり出ます。
- 退職した。退職時期や本人の希望などにより、未徴収分を普通徴収で納める場合と、最後の給与や退職金からまとめて差し引く一括徴収があります
- 転職した。新しい勤務先で特別徴収を継続できる場合があります。勤務先と市区町村の手続き状況によっては納付書が届くため、二重に納めないよう確認します
- 収入が下がった。住民税は前年所得をもとにするため、通常は下がった年の税額へすぐには反映されず、翌年度分から影響します
- 日本を離れる。出国前に納められない場合は、納税管理人を決めて市区町村に届け出る必要があります
退職を考えている場合は、退職後も前年所得をもとにした住民税の納付が続く可能性を見込み、納付方法と残額を勤務先や市区町村に確認しておくと安心です。退職後の失業保険の金額と受け取れる時期は失業保険(基本手当)はいくら・いつからにまとめました。
対象になる所得控除・税額控除を確認する
控除の種類は所得税と基本的に共通しますが、適用要件と控除額は制度ごとに異なります。自分が要件を満たす所得控除や税額控除を期限までに手続きすると、所得税と住民税の両方に影響する場合があります。当ブログで扱ってきたものを、住民税の側から並べ直します。
- ふるさと納税。総務省の説明では、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の限度まで所得税と個人住民税から差し引く制度です。住民税側は税額控除(税率を掛けたあとの金額から引く)なので、効き方が他と違います → ふるさと納税のやり方完全ガイド
- 医療費控除・セルフメディケーション税制。所得控除なので住民税の課税所得も下がります → 医療費控除とセルフメディケーション税制の選び方
- 生命保険料控除。年末調整で出すのが基本です → 生命保険料控除
※以下は広告リンクです(PR)。
このうちふるさと納税は、寄付先を選ぶところから自分で動く必要があります。控除上限額は年収だけでなく家族構成やほかの控除でも変わるので、サイトのシミュレーターで確かめてから寄付先を決めてください → さとふるで寄付先を探す
ただし控除額がそのまま戻ってくる制度ではありません。所得控除は課税所得を下げる仕組みです。所得割の標準税率が10%の場合、課税所得の減少額に10%を掛けた額が影響の目安になりますが、実際の税額は税率や税額控除などでも変わります。
※以下は広告リンクです(PR)。
掛金が所得控除になる制度としてはiDeCo(個人型確定拠出年金)もあります。所得控除の種類は所得税と住民税で基本的に同じなので、住民税の課税所得にも影響します。ただし原則60歳まで引き出せず、元本割れの可能性もあります。生活費や近く使うお金と分けたうえで、手数料と取扱商品を比べてから決めてください → 楽天証券の口座開設ページを見る
よくある勘違い
- 「所得税がかからないなら住民税もかからない」…別の基準です。総務省が示す単身・給与収入のみの例では住民税110万円、所得税178万円と差があります
- 「引っ越したら新しい住所の自治体に納める」…その年度の住民税は、原則として1月1日時点の住所地へ納めます。年の途中で引っ越しても、その年度分の納付先は変わりません
- 「均等割は全国どこでも同じ」…4,000円は標準的な額で、自治体が独自に定めている場合があります
- 「森林環境税は住民税の一部」…国税です。均等割と併せて徴収されているだけです
- 「所得税で使った控除額をそのまま住民税に当てはめられる」…種類が共通していても、控除額や計算方法が違うものがあります
まとめ
- 住民税は原則として前年の所得をもとに計算され、1月1日時点の住所地へ納める。納付は通常6月以降
- 中身は課税所得に対する所得割(標準税率10%)と均等割(標準額4,000円)。政令指定都市は2%と8%
- 森林環境税1,000円は国税。均等割と併せて徴収され、標準額では定額の負担が合計5,000円になる
- 非課税ラインは所得税と別のものさし。総務省が示す単身・給与収入のみの例では110万円、所得税の課税最低限は178万円
- 住民税の例が119万円になるのは令和9年度分の個人住民税から。2026年の所得をもとに2027年6月から反映
- 控除は種類が共通していても、控除額や計算方法が違うものがある。所得税の数字をそのまま使わない
住民税は、明細に金額だけが載っていて理由が見えにくい税金です。前年の所得にかかるという一点を押さえるだけで、退職や転職のときの見通しが立てやすくなります🧾
確認した公式情報
- やさしい地方税|個人住民税(総務省)※所得割10%の内訳、均等割4,000円、森林環境税1,000円、政令指定都市の税率、1月1日時点の住所地、所得控除と税額控除、普通徴収と特別徴収
- 令和8年度地方税制改正の概要(総務省・PDF)※個人住民税の非課税ライン(単身者)110万円→119万円、令和9年度分から適用、ひとり親控除は令和10年度分から
- 個人住民税について(総務省)※前年の給料で決まること、6月頃の納付書、退職時の一括徴収、納税管理人
- 毎年度の地方税制改正(総務省)※改正法令の原文
- No.1199 基礎控除(国税庁)※所得税側の基礎控除
- 地方税法(e-Gov法令検索)※第320条(普通徴収の納期)、第321条の5(特別徴収は12分の1の額を6月から翌年5月まで)
本記事は制度の紹介であり、個別の税額を保証するものではありません。住民税の実際の金額は、所得の種類・扶養している家族・お住まいの自治体の条例によって変わります。自分の税額や非課税になるかどうかは、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
最終確認日:2026年9月13日。税制は改正されます。ご利用前に総務省・国税庁・お住まいの市区町村の公式サイトで最新の情報をご確認ください。


コメント