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医療費の控除には2つの制度があります。よく知られている医療費控除と、市販薬が対象のセルフメディケーション税制です。
どちらも対象は「その年の1月1日から12月31日まで」に支払ったぶんです。つまり年が明けてから慌てても、もう足せません。
国税庁の現行案内では、いまの制度の適用期間は2026年12月31日までです。ただし、2026年度税制改正で制度の継続が決まっています。2027年分以後はスイッチOTC医薬品の適用期限を撤廃し、それ以外の対象医薬品は5年間延長されます。したがって、制度全体が2026年で終了するわけではありません。
2026年分で見落としやすいのは、申告する本人が年内に健診・予防接種などの「一定の取組」を行っている必要があることです。この記事では、国税庁・財務省・厚生労働省の公表資料を根拠に、2つの制度の違いと年内に残す記録を整理します。
2つの制度の違い
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 対象 | 病院・薬局などで支払った医療費 | 対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など) |
| 差し引く基準額 | 10万円(総所得金額等が200万円未満ならその5%) | 12,000円 |
| 控除の上限 | 200万円 | 88,000円 |
| ほかの条件 | 特別な健康取組の要件なし | 申告者本人が一定の健診・予防接種などを行う |
| 制度の期間 | 恒久制度 | 2026年分は現行制度。2027年分以後は対象薬の区分により期限撤廃または5年延長 |
★この2つは選択制で、両方は使えません。国税庁も「通常の医療費控除との選択適用」であり「併せて受けることはできません」と明記しています。しかも一度選ぶと、更正の請求でも変更できません。
医療費控除:ハードルは10万円、上限は200万円
計算はこうです。
(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補填される金額)− 10万円
この「保険金などで補填される金額」には、健康保険から支給される高額療養費も含まれます。国税庁のNo.1120でも、差し引く金額の例として挙げられています。入院などで高額療養費が戻った年は、その分を差し引いてから10万円と比べます。高額療養費そのものの上限額は高額療養費は令和8年8月から変更にまとめました。出産育児一時金も、No.1120で同じく差し引く金額の例に挙がっています。出産の年に受け取るお金は出産でもらえるお金にまとめました。
ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。所得が低い人ほどハードルが下がる仕組みです。
| ケース | 年間の医療費 | 差し引く基準額 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 総所得400万円 | 18万円 | 10万円 | 80,000円 |
| 総所得150万円 | 12万円 | 75,000円(5%) | 45,000円 |
10万円に届かないから無理、と決めつけないでください。総所得が200万円未満なら、その5%が基準です。上の例では7万5,000円を超えたぶんが対象になります。
対象は自分だけではありません。国税庁は「自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合」としています。家族分をまとめると10万円に届くことがあります。
控除額は最高200万円です。
セルフメディケーション税制:12,000円から、上限は88,000円
こちらは市販薬が対象です。計算は次のとおりです。
対象医薬品の購入費の合計(保険金などで補填される部分を除く)− 12,000円(最高88,000円)
たとえば対象の市販薬を年間3万円買っていれば、18,000円が控除額になります。差し引く基準額は12,000円ですが、対象になる医薬品だけで計算する点に注意が必要です。
対象になる薬の見分け方
国税庁によると、対象は次の2つです。
- スイッチOTC医薬品——もともと医療用だった成分が市販薬に転用されたもの
- 一定のスイッチOTC以外の一般用医薬品——対象範囲は改正されるため、購入年ごとの最新一覧で確認する
店頭での見分け方は2つあります。一部の対象医薬品にはパッケージに識別マークが付いています。またレシートに対象である旨が記載されます。具体的な品目一覧は厚生労働省のホームページに載っています。
識別マークの表示は義務ではないため、対象商品でも付いていない場合があります。最終的にはレシートの表示と、厚生労働省が公開する購入年の対象品目一覧で確認してください。
年内に確認したいこと:対象になる健診等を受けているか
ここが見落とされがちな条件です。セルフメディケーション税制を使うには、申告する本人が次のいずれかを実施している必要があります。
- 保険者や自治体が実施する健康診査(人間ドックなどを含む)
- 予防接種
- 労働安全衛生法に基づく定期健康診断(職場の健診)
- 特定健康診査(メタボ健診)
- 自治体が実施するがん検診
対象薬をいくら買っていても、申告者本人がその年に一定の取組を行っていなければ使えません。職場の健診などを受けた場合は、それが対象となる取組か、証明書類に必要な名称が記載されているかを年内に確認しておきましょう。
注意点が1つあります。国税庁は「一定の取組(人間ドックなど)に要した費用は、セルフメディケーション税制による医療費控除の対象となりません」としています。健診の費用そのものは、この制度では引けません。あくまで「受けたこと」が条件で、引けるのは対象医薬品の購入費だけです。
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どちらを選ぶかの目安
選択制なので、年末に多いほうを選びます。9月の時点では、次のように見当をつけておくと動きやすくなります。
| こういう年は | 先に試算したい制度 |
|---|---|
| 入院・手術・出産・歯の治療などがあった | 医療費控除 |
| 家族分を合わせると基準額を超えそう | 医療費控除 |
| 通院は少ないが、対象の市販薬をよく買い、本人が一定の取組を行った | セルフメディケーション税制 |
| 総所得150万円で、医療費が75,000円を超えそう | 医療費控除(この例の基準額は75,000円) |
年内は両制度の対象になり得る領収書・レシートを分けて保管し、確定申告の前に両方を試算します。通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、申告後に選び直すこともできません。
手続きで必要なもの
- 医療費控除:医療費控除の明細書を確定申告書に添付する。健康保険組合などから届く医療費通知があれば記入を簡略化できる
- セルフメディケーション税制:セルフメディケーション税制の明細書を添付する
- ★領収書とレシート、健診などの証明書類は自宅で5年間保管する。提出はしないが、捨ててはいけない
「一定の取組」を明らかにする書類としては、予防接種の領収書または予防接種済証、がん検診の領収書または結果通知表、職場の定期健康診断結果通知表、特定健康診査の領収書または結果通知表、人間ドックなど各種健診の領収書または結果通知表が挙げられています。健診書類は、種類に応じて「定期健康診断」という名称、勤務先名、保険者名などの記載が必要です。
結果通知表を証明に使える場合がありますが、必要な名称・勤務先名・保険者名などが記載されているかを確認してください。不足する場合は勤務先や保険者に証明書の発行を依頼する扱いが国税庁から示されています。
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いまからやる3つのこと
- 今年、対象になる健診・予防接種などを受けたか確認する。書類の名称・勤務先名・保険者名も確認し、結果通知表を保管する
- レシートを1か所にまとめ始める。病院の領収書と、対象市販薬のレシートを分けておく
- 家族分も集める。生計を一にする家族のために支払った分も対象になり得る
年末にまとめて探すと記録が漏れやすいため、箱や封筒を1つ用意するところからで十分です。確定申告そのものの流れはふるさと納税のやり方ガイドでも触れています。
まとめ
- 2026年分の対象は1月1日〜12月31日に実際に支払った分
- 医療費控除:10万円(総所得200万円未満なら5%)を超えた分。上限200万円
- セルフメディケーション税制:対象の市販薬が12,000円を超えた分。上限88,000円
- 2027年分以後も制度は継続。対象薬の区分により期限撤廃または5年延長
- 両方は使えない。選択制で、申告後の変更もできない
- 申告者本人が一定の健診・予防接種などを年内に行うことが条件
- 領収書と証明書類は5年間保管
いま制度を決め打ちする必要はありません。対象になり得る領収書・レシートを保管し、本人が行った一定の取組の証明書類を確認する。この2つを済ませ、確定申告前に両制度を試算しましょう💊
確認した公式情報
- 国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁|No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(セルフメディケーション税制)
- 国税庁|No.1132 セルフメディケーション税制の対象となる特定一般用医薬品等購入費
- 国税庁|No.1134 一定の取組を行ったことを明らかにする書類の具体例
- 国税庁|令和8年度税制改正の大綱(所得税関係)
- 厚生労働省|セルフメディケーション税制について
最終確認日:2026年9月6日。2026年分は現行制度、2027年分以後は令和8年度税制改正後の取扱いを記載しています。対象品目は購入年により変わるため、厚生労働省の最新一覧をご確認ください。本記事は制度の一般的な紹介であり、個別の税務相談に応じるものではありません。実際の申告にあたっては、国税庁の最新情報を確認するか、所轄の税務署・税理士にご相談ください。


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